オダギリジョーと三浦友和という二人の役者が中心になる劇場作品……と聞くと、個性派俳優によるとても渋くて格好いい作品が出来上がっても良さそうなものなのですが。
この作品から漂ってくるのは終始、ションボリ、トボトボといった、野郎二人のしょーもない雰囲気なのです。
これを読んでくださっているあなた、どうかガッカリしないでください。
この映画『転々』、そこがこそが良いのです。
なにせ、オダギリジョー主演の名作ドラマ、『時効警察』を手がけた三木聡監督の作品なのですから。
オダギリジョー演じる主人公、竹村文哉は、84万円もの借金を抱えた、まるでダメな留年法学生。
三浦友和が演じる借金の取立て屋、福原に脅迫めいた催促をされても、返す当てすらまともに見つからない始末。
ところが、福原が突然、奇妙な話を持ちかけてきます。
自分の提案を呑めば、借金をチャラにした上、報酬100万円。
その提案とは……自分と一緒に東京散歩をすること、だけ。
どう考えても嫌な予感しかしないのだが、文哉は受けるしかなく……。
そうやって始まる、風体からしてダメな感じの男二人のトボトボ東京散歩。
この『トボトボ』としか表現のしようがない二人の感じが。
実に、良いのです。
格好良いとか哀愁とか、そんな要素は皆無だと思ってください。
二人ともただただとにかく、格好悪い。ダサい。
「将来の夢は?」と福原に聞かれて、「内閣総理大臣」と答える文哉が実にショボいです。
街の時計屋の店主に「どうやって食ってるんですか?」と聞いてブチ切れられて追い回される福原が実にヘボいです。
ありとあらゆる低次元な形容詞を使いきっても足りないくらい、本気でもう、ダメダメです。
でも、そのダメさ加減が実に『人間臭さ』を感じさせるという、三木監督の不思議な演出。
表現はどれも誇張されていて、有り得ないようなことの連続なのに、妙にリアリティーがあるのです。
もちろん、この映画の見所はそれだけではありません。
もうひとつ平行して進んでいく物語や、脇を固める小泉今日子や広田レオナ、デビューしたての吉高由里子といった女優陣の豪華さなどなど。
色々な楽しみ方はあると思うのですが、まずはひとつの指標として。
二人の格好良い俳優が、本気で格好悪い人間を演じていることの、格好良さ。
是非、その素晴らしさに感動していただけたらと思います。
人間って、格好悪いけど、きっとそれでいいんだ。